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富山インド協会


2013年 活動報告

新春座談会

仏教発祥の地インドは、日本人の「心の源流」ともされます。昨年の天皇、皇后両陛下のご訪印に続き、1月に安倍晋三首相がインドを訪問しました。12億の人口を抱え、限りない成長力を秘めた大国と日本との絆が深まる中、富山インド協会は経済・文化両面で交流を深化させています。駐日インド大使のディーパ・ゴパラン・ワドワ氏と文化勲章受章者で、高志の国文学館館長の中西進氏、北陸銀行会長の麦野英順氏、ボリウッド女優でダンスアーティストの板倉リサ氏が東京のホテルオークラ東京に集い、インド経済の実情や、地域からの文化交流の在り方などについて語り合いました。

相互理解で絆強く

    【出席者一覧】
  • ディーパ・ゴパラン・ワドワ 氏(駐日インド大使)
  • 中西  進 氏(文化勲章受章者、高志の国文学館館長)
  • 麦野 英順 氏(北陸銀行会長)
  • 板倉 リサ 氏(ボリウッド女優、ダンスアーティスト)
  • 河合  隆(北日本新聞社会長、富山インド協会長)

経済:~富山と産業構造マッチ~

河合昨年11月に富山インド協会が訪ねたバンガロールでは、空港の拡張をはじめ、インフラ整備が着々と進んでいた。次の海外拠点にインドを視野に入れる企業が増えている。ただ、工業用水の確保や電力の安定供給といった課題もある。麦野会長はインド経済の行方をどう見ているのか。
麦野一番の魅力は、世界第2位となる、人口12億の巨大マーケットだ。しかも30歳以下が人口の7割を占め、15~24歳の若者が2億3千万人もいる。ITやソフトウエアの分野では、豊富な若い労働力とともに、数字に強く、英語に不自由しない優位性を存分に発揮している。経済成長率に若干ブレーキがかかってきたとはいえ、千社を超える日系企業が進出している。県関係でもYKKや不二越など13社を数える。インド政府は自動車や工業機械、電子部品などに重点を置いているが、この分野は富山の産業構造とマッチする。結び付きがさらに深まるよう努力したい。
板倉映画は社会事情を反映するが、経済的な発展に伴って、スクリーンに登場するファッションも変わってきた。自分の作品は、あまり肌を露出しないなど、いい意味で良きインドを表している映画だ。経済的に発展しても、心の豊かさを忘れてはならない。
河合経済発展の中で、精神世界との調和をどう考えればいいのか。
中西インドはインターネットの利用者数と、二酸化炭素の排出量、石油使用量、鉄道の長さがいずれも世界4位となっている。このままでは先進国のわだちをたどるのではないか。やはり、心が大事だ。コンピューターは魔法か宗教のごとく世界に広まっているが、そもそもコンピューターとは何かという哲学を加えて広がらなくてはならない。心を持った経済交流を期待している。
ワドワ日印間の経済的なつながりは増えてくるだろう。DMIC(デリー・ムンバイ間産業大動脈)は大きなインフラのプロジェクトで、新しいまちが計画されている。そこに富山の中小企業を誘致したい。中小企業にとって進出はまだ難しいが、富山でセミナーを開き、まちの構想を説明したい。

富山とインドの文化交流の在り方などをテーマに語り合う
ワドワ駐日インド大使(中央)、中西高志の国文学館館長(左から2人目)、
麦野北陸銀行会長(右から2人目)、板倉氏(左)、河合北日本新聞社会長(右)
東京・港区のホテルオークラ東京

文化:~歴史学ぶ機会増やす~

河合 富山では昨年、インド映画「炎の男クマルのように働きなさい」のロケが行われ、話題になった。映画は南インドで公開され大ヒットした。ロケをきっかけに、県内でもインド映画が話題になる機会が増えた。両国の文化交流を進めるには何が求められるのか。
   
板倉  ボリウッド映画には、言葉を超えて人と人をつなぐパワーがある。横浜でロケが行われた際、エキストラで参加していた日本人ダンサーがボリウッドダンスの魅力を知って感激していた。富山でも日本とボリウッドのスタッフが協力してロケが実現すれば、文化交流が深まるのではないか。映像アーティストを目指す日本の若者や、ダンスに興味のある市民を巻き込み、富山の美しい風景をバックに踊る作品を作れば、北陸新幹線開業に向けたPRにも活用できるはずだ。
ワドワ  本国では富山で撮影された映画を多くの人が見た。インドでは想像以上に日本に対する理解が進んでいる。日本で映画を撮りたいと考えるプロデューサーも多い。彼らは、日本に他国にはないユニークなものがあると期待しているようだ。日本で作られるボリウッド映画は今後ますます増えるだろう。
麦野 文化交流を進めるには、若い世代の行き来を活発にする必要がある。特に留学生をもっと増やすことが大切だ。インドの優秀な学生を招へいするため、現地に事務所を開設している日本の大学もある。日本の若者には、積極的に現地に足を運んでほしい。インドは日本の9倍の国土に、多くの民族が暮らし、さまざまな言語が存在している。相手の国の文化や風習を尊重し、多様性を受け入れる能力が今後ますます必要になってくる。
ワドワ 日本で学ぶインドの学生は、現在600人に満たない。日本に関する情報が不足しているのが原因だ。日本の銀行などがスポンサーになって奨学金制度が設けられれば、日本に関心を持つ学生は増えるだろう。また、富山と姉妹都市協定を結ぶインドの自治体が出てくると、大学間の関係も強化されると思う。
河合 姉妹都市や姉妹校の実現に、富山インド協会としても努力していきたい。
中西 民間や地方自治体が交流を進めていくことで、国全体を動かしていくことが必要だ。高志の国文学館でも、インドを深く知る機会を設けられるだろう。東シナ海を挟んだ日印の交流の歴史や、将来展望について理解を深めるきっかけになるはずだ。
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